5月最後の日曜日、それはフランスでの母の日です。

クリスマスやバレンタインデーと同じで母親に「感謝し、お祝いする」日より「プレゼントを買う」日になったのは残念ですが、嬉しいことに花をあげる習慣が完全に消えませんでした。とはいえ、母親にカーネーションをあげる日本のしきたりとはまた少し違って、男性が妻に、または(男女問わず)「母親」である親しい女性に花束を差しあげる機会だったりします。

カーネーションは地域によって縁起が悪いと言われており、5月の花・バラ、特に丸くて、上品な香りが特徴の古い種類が女性にも男性にも人気がありますが、ある程度個性に欠ける、「普通」なチョイスです。

お花も流行があり、ここ数年紫陽花、そして牡丹を花屋でよく見かけるようになりました。西フランスでは紫陽花が美しく、庭で育てる花と認識されていますが、花束で使うと上品でシックなパリ風のアレンジメントの雰囲気がします。

最近最も人気があるのは牡丹です。母の日にお勧めするフラワースタイリストが多く、女性誌の記事のスターフラワーになりつつあります。

アジア圏ではそんなに珍しくない花なので、日本の方がフランス人が拘る理由が今一わからないのかもしれませんが、ごく近年まで花屋の花束用の牡丹は基本的に輸入花でした。東南フランスにあるヴァ―ル県は牡丹を育てるには理想的な環境だったおかげでたった数年で花農家が市場のトップを狙えるようになり、フランス人が牡丹を簡単に購入できるようになりました。

簡単に手に入れれば、普通の花になり下がるのか、多少気になります。あれだけ美しい花ですが、あれだけ流行れば、飽きる可能性が大きいのではないでしょうか?5、10年後に牡丹がバラのように特別な花であり続けると踏んでいますが、バラと全く同じように種類によって、花束を差しあげても喜んでもらえるとは限らないのかもしれません。

 

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東南仏生まれ。写真好きな母とミステリーマニアの祖父母によって風変わりな教育を受ける。旅好きな祖父母の遺伝子を濃く継いで、歩ける前にボートに乗っていたことを誇りに思い、「水」に関するすべてに興味を示し、ボートをこよなく愛す。 画家・フランソワ・シャンポリオン("エジプト学の父"と呼ばれたジャンフランソワ・シャンポリオンの子孫)の弟子で、そのアトリエにあった本を捲ったある日、雪舟の水墨画に心を奪われ、日本を描く夢を抱くようになり、絵を描きながらもパリのフランス国立東洋言語文化研究所(Institut National des Langues et Civilisations Orientales-INALCO)を卒業して以来、画家、講演者、翻訳家、通訳者として活躍しており、フランスと日本両国間の架け橋になろうと頑張っている。 祖母の影響で無二の料理好きに育ち、レシピ集を書くように勧められても躊躇っていたが、3・11後に祖母から頂いた"作る"と"食べる"というシンプルな幸せと安心を分かち合いたく、料理研究家として活動し始める。「みんなが笑顔になるフランスの定番おやつ Goûter」(自由国民社)、「マリエレーヌのアイスクリームとシャーベット」(文化出版局)の著者。故郷であるコートダジュールを深く愛し、「コートダジュール大使」になったことを心より光栄に思う。

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